能登半島地震における被災資料保全に関する緊急声明



2024年1月1日の午後、石川県能登地方を震源とし、最大震度7を観測した強い地震が発生し、大津波警報も出されました。被害は、石川県のみならず福井・富山・新潟県など広い地域に及んでいますが、震源地となった能登地方の被害はとりわけ甚大で、その後も大きな余震が続いています。犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災地の皆様には衷心よりお見舞い申し上げます。また、一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。

近年、大地震のみならず豪雨などの自然災害が頻発するなか、文化財や古文書をはじめとする歴史資料、自治体公文書等の被害にも多大なものがあります。今回の大地震でも、すでに多くの文化財の被災が報じられていますが、被害の全容は容易につかめない状況です。今後復旧・復興が進むなかで、被災した文化財や歴史資料等の滅失や流出も危惧されます。このような事態のなかで、被災文化財・歴史資料等の救済・保全への取り組みが緊急の課題といえます。

国の文化財防災センターでは被災文化財等救援事業立ち上げに向けて動き出し、史料ネットも対応を検討していると聞き及んでいます。日本歴史学協会といたしましては、そうした活動に期待するとともに、歴史学関係者をはじめ広く皆様に対し、被災資料のレスキュー活動、文化財・歴史資料等の保全・保存活動への積極的な参加・協力を呼びかけます。

被災地の皆様には厳しい状況のなか、まずは生活再建が第一であることはいうまでもありませんが、復旧・復興の過程において文化財や歴史資料等を廃棄することなく、被害状況について地域の行政機関・史料保存利用機関等へ連絡することを呼びかけます。それとともに、国や自治体に対しては、大災害の続発を前提に平時からの文化財や歴史資料等の所在把握と管理体制の強化に加え、緊急時における速やかな対応と救済・保全に向けた更なる取り組みをはかることを、重ねて強く要請いたします。


2024(令和6)年1月21日


日本歴史学協会  

会長 若尾 政希